「伝えたい日本のこころ」

無手勝流・塚原卜伝とらんぼう侍


塚原卜伝(小サイズ)




無手勝流・塚原卜伝とらんぼう侍





「伝えたい日本のこころ」第七話。
今日は、"らんぼう侍”と塚原卜伝のお話、
体格のよい外国人タレントさんの残念なニュースにふと思いたってお届けします。
刀はなんのためにあるか・・・
武道関係の仕事で出会ったお話、今あらためて、奥深い示唆を感じます。


剣術の名人・塚原卜伝が、諸国をめぐり、武者修行していたころのことです。
琵琶湖の矢橋(やはせ)の渡しを舟でわたろうとしますと、ひげが濃く、立派な体格の見るからに強そうな侍が乗り込んできました。侍は乗り合わせた人々に、だれを一太刀でたおした、刀を構えただけで相手が逃げたと、無作法に自慢話をしていばりちらしていました。

やがて、侍はへさきのほうで眠ったふりをしている卜伝が木刀をもっているのを見つけ、声をかけました。
「おまえも剣術修行中か。だれに剣法をならった。」
卜伝は答えました。
「自分で研究しています。先生はいません」
すると侍は、
「それはいかん。必ず相手に勝てるようにわしが教えてやろう。」
「勝とうとは思っていません。ひとに負けない修行をしているのです。ありがたいが流儀がちがいます。」
「なまいきな。おまえの流儀はなんというのだ。」
「無手勝流といいます。」
「たわけものめ。手がなくて勝つわけはない。腰にさした刀はなんのために使うのだ。」
「刀は自分のなまいきな心や横道にそれる悪い心を切るためのものです。」
「くだらん。では無手勝流とやらの腕前を見せてもらおう。船頭、舟を岸につけろ。」
からんでくる侍に卜伝はいいました。
「よろしい。あの離れ小島ならちょうどいい。船頭さん、あの島に船をつけてください。」

舟が離れ小島に近づくと、ひげざむらいはひらりと岸にとびあがり、刀を抜いてかまえました。卜伝はゆっくりと立ち上がり、船頭からさおをかりると、ぐいと岸をつきました。舟はみるみる岸からはなれて動き出しました。
「これがわたしの無手勝流だ。刀はむやみにぬくものではない。その島でゆっくり考えなさい。」
くやしがるひげざむらいをみて、舟客たちはやんやと喜び、卜伝をほめたたえました。


刀は自分のなまいきな心や悪い心を切るためのもの――
このお話は、世界中の人々が関心を寄せる武士道精神をわかりやすくあらわしていますね。
それにしても、家庭内外、世界じゅう、
すぐに刀を抜こうとする乱暴ものがたくさんあります。
卜伝のような英傑が颯爽と現れ、悪漢たちを痛快に成敗してくれるといいのですが。




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