「伝えたい日本のこころ」

八岐大蛇






八岐大蛇





「伝えたい日本のこころ」第十五話です。
今日は、今の時代への示唆に富む物語「八岐大蛇」をお届けします。
神話は人間のルーツの物語、こうしたお話から得る深遠なイメージが、知らず知らずこころに栄養を、ときに人生に幸運を運んできてくれることがありますね。


神々の住む天上界・高天原を追放されたスサノオノミコトは、出雲国・肥の川の上流、鳥髪(とりかみ)に降り立ちました。しばらく歩いていくと、老夫婦が娘とともに泣いているのに出会います。
老人は国つ神、大山津見(オオヤマツミ)の神の子、アシナヅチでした。妻テナヅチとのあいだに八人の娘がありましたが、八つの頭と八つの尾を持つおそろしい大蛇、八岐大蛇に年にひとりずつ食べられてしまい、最後の娘・クシナダヒメも、まもなく餌食になるので、泣いているといいます。

スサノオは、娘をわたしに奉るか、
自分はアマテラスオオミカミの同母弟で、天界から降りてきたところである、と告げました。
老夫婦は承諾し、ぜひ助けてほしいと願いました。
するとスサノオは、酒の入った瓶(かめ)を八つ用意させ、大蛇を待ちました。

しばらくしてあらわれた大蛇は、瓶に入った酒を飲み、酔って眠ってしまいます。そこでスサノオは十拳剣(とつかのつるぎ)をもって、大蛇に切りつけ、みごとに退治しました。尾を切ったとき、剣の刃がかけたので、不思議に思って調べてみると、一本の立派な太刀が出てきました。
スサノオはこの太刀をアマテラスに献上しました。八岐大蛇の尾からあらわれたこの太刀は、のちに霊剣・草薙の剣となりました。


この絵は、ドイツ語版絵本の表紙絵に採用されました。
ドイツといえば、グリム童話――グリムにも類似の物語がありますからね、と
ドイツ文学の大家で絵本翻訳者の橋本孝宇都宮大学名誉教授が教えてくださいました。
「二人の兄弟」(KHM60)、竜の生贄にされるお姫様を助けるお話です。
グリムもさすがに奥深く、面白い世界です。

ギリシア神話でも、英雄ペルセウスが怪物からアンドロメダを救うという有名なお話がありますね。
ヨーロッパに多く見受けられるというこうした竜退治の物語に限らず、世界じゅうに、ほかにも類似したパターンをもつ伝説や昔話が多いということは、皆さまもよくご存じでしょう。
さて、それはなぜか???
どんなふうに類似していてどう違うのか?
そうしたことを、学生時代、夢中で勉強していました。恵まれた学生時代でした。40年近く前のことですが。
そしてそのときにたどり着いた答えを、今でも変わらず信じ、深めながら物語を描く絵筆に託しています。
子どもの頃、誰もが親しんだスサノオ神話、英雄による怪物退治の典型的なお話、そのオロチは何を象徴しているのか?そうしたことを考えていると、いつもどこまでも果てしなく遠くに行ってしまいます。

withコロナの今、また昨今の自然の猛威を前に、神話的イメージに重ねる思いもひとさまざま、そんなふうにも感じています。神話の太古から、どのような時代も、どのような場面でも、私たちの心の旅は、続きますね。果てしないGo To、です。


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